使役文の作り方と3つの意味|許可・強制・他動詞的表現を図解・イラストで整理【日本語教師向け】

使役文の作り方と3つの意味|許可・強制・他動詞的表現を図解・イラストで整理【日本語教師向け】 文型

概要

【使役文の基本構造】

種類主語ガ格(使役主)二格 / ヲ格(動作主)使役動詞
他動詞の使役母親が(使役主)エマに(動作主)食べさせる
自動詞の使役母親が(使役主)エマを(動作主)走らせる

【能動文⇒使役文の主語と助詞の変化】

種類能動文使役文主語動作主動詞の変化助詞の変化
他動詞エマがピーマンを食べる母親がエマにピーマンを食べさせる使役主=母親動作主=エマ食べる→食べさせる「が」→「に」/「を」変化なし
自動詞エマが走る母親がエマを走らせる使役主=母親動作主=エマ走る→走らせる「が」→「を」

【意味用法の比較表】

用法説明動作主の意志例文
許可やりたい相手に許可するあり母親が子どもにご飯を食べさせる(子ども→食べたい)
強制やりたくない相手に無理にさせるあり母親が子どもにご飯を食べさせる(子ども→食べたくない)
他動詞的表現の使役意志のない対象に働きかけて行為を実現なし母親が子どもにご飯を食べさせる(口に運ぶ)
無意志対象の使役自然現象などを変化させるなし太陽が花を咲かせる

使役文の基本構造とつくり方

使役文の基本構造

種類主語ガ格(使役主)二格 / ヲ格(動作主)使役動詞
他動詞の使役母親が(使役主)エマに(動作主)食べさせる
自動詞の使役母親が(使役主)エマを(動作主)走らせる

使役形の活用

使役形の動詞の活用についてはこちらの記事をご参照ください。

使役形の作り方|I・II・IIIグループ別活用を図解でスッキリ整理|活用早見表付き【日本語教師向け】
グループ別にわかれる難しい使役形の活用。日本語教師向けに図解付きで整理しました。

使役動詞と格の変化(他動詞・自動詞)

はじめの文を使役文にすると、動詞は使役動詞に変わります。

使役文になると、新たな人物が加わり主語が変わります。

✓はじめの文使役文(主語変わる)
✓動詞➡使役動詞

他動詞の使役文

【はじめの文】
エマピーマンを食べます

使役文
母親
エマピーマンを食べさせます

使役文では、

主語は指示などをするだけ(使役主=母親)の人で、

実際に食べる人はニ格にあたる人(動作主=エマ)です。

※はじめの文…能動文
※使役主…使役文においてある行為をさせる人。
※動作主…その行為をする人。

はじめの文(能動文)
主語➡動作主
使役文※他動詞の場合)
主語➡新たな人物(使役主)
二格➡動作主

自動詞の使役文

自動詞の使役文の場合は「二格」ではなく「ヲ格」にあたる人が動作主です。

【はじめの文】
エマ走ります

使役文
母親
エマらせます。
はじめの文(能動文)
主語➡動作主
使役文※自動詞の場合)
主語➡新たな人物(使役主)
ヲ格➡動作主

【他動詞・自動詞の見分け方についてはこちら↓↓】

自動詞・他動詞ってどう違う?簡単に見分けるコツ【自他①見分け方編】
「この動詞って自動詞?他動詞?」と迷ったことありませんか?日本語教師向けに、自他の見分け方のポイントをイラスト付きで紹介します。

使役文の3つの意味用法|許可・強制・他動詞的表現

使役表現の意味用法の分類には諸説あるようですが、それは「使役」という言葉の意味をどう捉えるかによって変わってきます。

本記事では、「使役」の基本的な意味を「人が人に何かしらの行為をさせること」といった人間関係を軸にしたものであるとします。
それはすなわち「使役主が動作主に何か行為をさせること」であり、
また「動作主が自らの意志をもってその行為を行う」ことが動作の実現であるとし、使役の用法を考えていきたいと思います。

【この記事での基本的な使役の意味】
「人が人に何かをさせる」=人間関係が軸
動作主の意志を伴う

ここでは、大まかに使役の代表的な用法二つとそこに分類しづらいパターンの一つを
母親が子どもにご飯を食べさせる
の例文に沿ってご紹介します。

①許可の使役

①「母親が子どもにご飯を食べさせる

使役表現の意味用法の代表格の一つが「許可」です。

これは、「食べたい子ども」に対して「いいよ」と母親が許可を与える表現です。
動作主(子ども)は自分の意志で食べます

許可
「~したい人」「~させる」こと。

②強制の使役

②「母親が子どもにご飯を食べさせる

使役表現の意味用法の代表格のもう一つが「強制」です。

こちらは、「食べたくない子ども」に対して母親が「ダメ。食べなさい」と積極的にその行為を動作主に強いる表現です。
そして、動作主(子ども)は自分の意志で食べることになります。

強制
「~したくない人」「~させる」こと。

③他動詞的表現の使役

③「母親が子どもにご飯を食べさせる

上記の①「許可」と②「強制」が使役表現の用法説明としては割と代表的ですが、「子どもにご飯を食べさせる」にはこういったパターンも日常ではよく見られます。

このパターンが①許可②強制と大きく違うのは、ここで言う「使役」の意味が強く含まれていないところです。

まず、③の動作主(子ども)はしっかりとした意志を持ってご飯を食べることができません。

つまり、この絵の状況は、動作主(子ども)使役主(母親)の指示などによって「自分でご飯を口に運んで食べる」わけではなく
代わりに、母親が動作の対象である「ご飯」直接働きかけることによって「子どもがご飯を食べる」という動作が実現しています。

これは使役表現というよりも、人の対象(物)への働きかけ表す他動詞的表現に近いと言えます。

能動文ぽい使役みたいな、使役感のうっすーい使役みたいな。

まるで「母親」が影武者みたいになっているね。

他動詞的表現
「~できない人」の代わりに使役主が動作の対象に直接働きかけることで、動作主によるその行為が実現する。

自他④「寝かせる」「寝させる」の違いの記事の中にもあった「その動作を行う人の意志あるかどうか」という点がこの分類にも表れているね。

無意志動詞の使役|「花を咲かせる」

「咲かせる」「腐らせる」といった無意志動詞が使われる場合の使役文も、他動詞的表現に含みます。

人間以外の無意志な対象への働きかけを含むものも「他動詞的な使役」として分類できます。

確かに。

例えば、「走りなさい」と指示されて「はい、走りまーす」は言えるけど、「咲きなさい」と指示されて「はい、咲きまーす」とはならないもんね。

でも、何らかの働きかけによって「花を咲かせる→花が咲く」ことはできる。

「基本的な使役」と「他動詞の代わりとしての使役形」の違い

用法主な意味働きかける人される人・もの備考
①使役(基本的意味)強制・許可など明確に存在(人など)明確に存在(人など)強い人間関係性や意志を伴う
②他動詞の代わりとしての使役(代用表現)変化の原因明確、あるいは抽象的(自然現象など)に存在もの・事象が多い(自他ペアになる)他動詞がない時に、その意味を補う目的で表現

表で比較|使役文とその意味の違い

用法説明動作主の意志例文
許可やりたい相手に許可するあり母親が子どもにご飯を食べさせる(子ども→食べたい)
強制やりたくない相手に無理にさせるあり母親が子どもにご飯を食べさせる(子ども→食べたくない)
他動詞的表現の使役意志のない対象に働きかけて行為を実現なし母親が子どもにご飯を食べさせる(口に運ぶ)
無意志対象の使役自然現象などを変化させるなし太陽が花を咲かせる

 

【他動詞についてはこちら↓↓】

自動詞・他動詞ってどう違う?簡単に見分けるコツ【自他①見分け方編】
「この動詞って自動詞?他動詞?」と迷ったことありませんか?日本語教師向けに、自他の見分け方のポイントをイラスト付きで紹介します。

 

参考文献はこちら

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