「寝かせる」と「寝させる」はどう違う?意味と使い方をイラスト・図解でやさしく整理【自他④発展編】

「寝かせる」と「寝させる」はどう違う?意味と使い方をやさしく整理【自他④発展編】 文型

概要

【「寝かせる」と「寝させる」/ 語形の違い】

表現文型動作主の意志使役主の関与働きかけの種類
寝かせる他動詞×(意志なし)◎(積極)直接的
寝させる自動詞の使役形◎(意志あり)○(間接)間接的

【「寝かせる」と「寝させる」/ イメージの違い】

使い方文法主語の行動対象者の意志イメージ例
寝かせる他動詞直接的に寝るように働きかけるない子どもをとんとんして寝かせる
寝させる自動詞の使役形寝ることを許可・指示するある「ちょっと寝させて」と許可を求める

「寝かせる」と「寝させる」は同じ意味?

んー、わからない。謎です!

謎ですって?一体どうしました?

「寝かせる」と「寝させる」の意味の違いなんですが…。

母親が子どもを寝かせる
母親が子どもを寝させる

あれ、全く同じ意味の文が二つある?

そんな無駄なことある?だったら一つでいいじゃん。

全く意味が同じである複数の語は、一つの言語の中に存在しないと言われています。

では、一つずつ紐解いていきましょう。

語形から考える「寝かせる」と「寝させる」

「寝る」の自動詞・他動詞の関係

「寝かせる」「寝させる」

それぞれ自動詞と他動詞どちらだと思いますか?

どちらも対象(物)に対する人の働きかけなので両方とも他動詞っぽいよね。

そうですね。

そして、「寝かせた」もしくは「寝させた」結果はこれですね。

あ、寝た。

そう。寝た。

ということで、自動詞は「寝る」です。

✓原因→寝かせる、寝させる
✓結果→寝る

【他動詞・自動詞の原因と結果の関係についてはこちら↓↓】

自動詞・他動詞ってどう違う?簡単に見分けるコツ【自他①見分け方編】
「この動詞って自動詞?他動詞?」と迷ったことありませんか?日本語教師向けに、自他の見分け方のポイントをイラスト付きで紹介します。

「他動詞の代わり」とは?

他動詞?   【自動詞】
 寝かせる     寝る
 寝させる

あれ?他動詞が二つ?

形が似ているので両方とも他動詞っぽいですね。

あ!「他動詞の代わり」っていうのもあったよね。

【「他動詞」と「他動詞の代わり」についてはこちら↓↓】

他動詞がない時は?自動詞+使役形で代用しよう!イラスト・図解付き【自他③使役編】
他動詞がない動詞、どう教える?そんなときは自動詞の使役形で代用する方法があります。日本語教師向けに、使い分けのコツと指導のポイントをわかりやすくまとめました。

ということは、どちらかが「他動詞」でどちらかが「他動詞の代わり」になるってこと?どういうこと?

少し近づいてきました。

では「他動詞の代わり」とは一体何で表せましたか。

はい!

自動詞の使役形です!

他動詞の代わり ー 自動詞の使役形

文法的な違いを整理しよう

材料はそろいましたね。

では、「寝る」の使役形は何でしょうか。

【使役形の活用についてはこちら↓↓】

使役形の作り方|I・II・IIIグループ別活用を図解でスッキリ整理|活用早見表付き【日本語教師向け】
グループ別にわかれる難しい使役形の活用。日本語教師向けに図解付きで整理しました。

はっ!「寝させる」だ!

そうです。つまり…

寝かせる=他動詞/寝させる=使役形

寝かせる→他動詞
寝させる→自動詞「寝る」の使役形

「他動詞文」と「使役文」になるわけかあ。

ん~!ややこしい…

ここの意味の違いをもう少し深堀した方が良さそうですね。

原因と結果の視点から比較

「寝る」という結果に対して、働きかけが二つ…。

でも、ここに意味の違いってそんなにないでしょ?

それならどちらか一つでいいじゃん。というか、どちらでもいいじゃん。

使役文と一口に言っても中々奥が深いのですが、

ここでは「寝かせる」と「寝させる」の違いを理解するための他動詞自動詞の使役形について考えてみましょう。

ココがポイント!
前回の自他③の説明を少し思い出してください。

自他③では、自動詞「咲く」の使役形「咲かせる」は、「他動詞の代わり」になると紹介しましたね。

ただ、今回の「子どもを寝させる」はこの時とは少し意味が異なり「他動詞の代わり」と位置付けるには使役の意味が強いように感じます。

今回は、他動詞が人の対象への直接的な働きかけを表し、使役が間接的な働きかけを表すという点から、他動詞「寝かせる」と自動詞「寝る」の使役形「寝させる」の意味の違いを考えていきたいと思います。

【使役文についてはこちら↓↓】

使役文の作り方と3つの意味|許可・強制・他動詞的表現を図解・イラストで整理【日本語教師向け】
「使役って、なんとなくはわかるけど、いざ教えるとなると不安……」そんな日本語教師の皆さんのために、この記事では使役文の基本的な仕組みをイラスト付きででわかりやすく整理しています。

意味の違いをイメージでとらえる

では、ここで言う「直接的」「間接的」とは何か。イメージしてみましょう。

直接的 vs 間接的な働きかけ

他動詞寝かせる」について
直接的イメージ
例:「母親子どもを寝かせる
一人では寝られない子どもに対し、歌いながらとんとんしたり、添い寝をしたり、抱っこしたりして、主語の人物理的な接触を起こして寝るように仕向けるイメージ。
自動詞の使役形寝させる」について
間接的イメージ
例:「母親が子どもを寝させる
主語の人は「寝なさいよ」などと指示するために登場するだけで、寝る人自分の意志で寝るイメージ。

なるほど。

確かに「寝かしつけ」って言葉があるくらいだから、子どもでイメージするとわかりやすいね。

大人でもイメージすることはできますよ。

例えば、寝に行こうと立ち上がったら…

①「夫が妻を寝かせる」

妻①

あ!「イタタタタ…腰やっちゃった」の時ね!

この状況は寝させるじゃなく、寝かせるだよね。

②「夫が妻を寝させる」

妻②

私は疲れた時に、よく夫に「ちょっと寝させて」と言うよ。

でも、確かにこれは別に抱っこしてベッドに連れて行ってほしいわけじゃないもの。

これに対して夫も「寝ておいでよ」って声かけするだけだから、私の言いたいことは伝わっているのよね。

他動詞寝かせる
→主語の人直接的な働きかけによって「寝る」状態にする。
自動詞の使役形寝させる
→寝る人意志によって「寝る」状態にする。(主語の人は指示や許可のみ)

 

寝る人の「意志」があるかどうか

いずれにせよ「寝る」という結果に繋がるから、どちらでも使える場面は多々ありそうですが、状況によってはやや不自然に聞こえる時もあるでしょうね。

赤ちゃんや意識のない人など、自分の意志で動けない人を「寝る」に繋げるには補助の手が入る「寝かせる」の方がしっくりくるし、

「寝るから許可をください」みたいな時は、使役形「寝させる」の方がしっくりくるね。

寝る人意志があるかないかに注目する。
使い方文法主語の行動対象者の意志イメージ例
寝かせる他動詞直接的に寝るように働きかけるない子どもをとんとんして寝かせる
寝させる自動詞の使役形寝ることを許可・指示するある「ちょっと寝させて」と許可を求める

コメント

タイトルとURLをコピーしました