概要
1分で読めるまとめ版
・日本語の授受表現「あげる・くれる・もらう」は、「ウチ・ソト」の関係で整理すると理解しやすい。
・あげる
基本:ウチ → ソト
・くれる
基本:ソト → ウチ
・もらう
基本:ウチ ← ソト
・「あげる」は最も広く使える授受表現。
・「くれる/もらう」は、「わたし」や「わたしの身内」が関わる時のみ使用。
・「ソト同士」のやりとりは「あげる」で表す。
・「くれる」と「もらう」は、同じ出来事を視点・主語を変えて表現するペア。
●ポイント:
・「あげる」「くれる」
⇒与える人が主語(視点=与える側)
・「もらう」
⇒受け取る人が主語(視点=受け取る側)
1分で読める整理表
【「あげる」の整理表】
パターン | 例文 | 自然な表現? |
---|---|---|
ウチ→ソト | わたしが加藤さんにプレゼントをあげました。 | ○ |
ウチ→ウチ | わたしが母にプレゼントをあげました。 | ○ |
ソト→ソト | 加藤さんがエマさんにプレゼントをあげました。 | ○ |
ソト→ウチ | 加藤さんがわたしにプレゼントをあげました。 | ✖ |
【「くれる」の整理表】
パターン | 例文 | 自然な表現? |
---|---|---|
ソト→ウチ | 加藤さんがわたしにプレゼントをくれました。 | ○ |
ソト→ウチ(わたしに身近な人) | 加藤さんが弟にプレゼントをくれました。 | ○ |
ウチ→ウチ(わたし) | 妹がわたしにプレゼントをくれました。 | ○ |
ソト→ソト | 加藤さんがエマさんにプレゼントをくれました。 | ✖ |
ウチ→ソト | わたしが加藤さんにプレゼントをくれました。 | ✖ |
【「もらう」の整理表】
パターン | 例文 | 自然な表現? |
---|---|---|
ウチ←ソト | わたしが加藤さんにプレゼントをもらいました。 | ○ |
ウチ(わたし)←ウチ | わたしが母にプレゼントをもらいました | ○ |
ソト←ソト | 加藤さんがエマさんにプレゼントをもらいました。 | ✖ |
ソト←ウチ | 加藤さんがわたしにプレゼントをもらいました。 | ✖ |
1発理解のイラスト集
【「あげる」のイラスト】
【「くれる」のイラスト】
【「もらう」のイラスト】
「あげる・もらう・くれる」をどう整理するか

授受表現「あげる・もらう・くれる」の違いが、いつまで経っても整理できません。
説明しようとすると複雑でややこしいのに、私たちは自然に使い分けていますよね。とても不思議です。

確かに。
では、この「自然な使い分け」を逆手にとって、ウチソトの関係から考えてみましょう。
まずは、次の文を見てください。
「あげる」徹底整理!
不自然に感じる文の例
(?) 加藤さんがわたしにプレゼントをあげました。

これは、「あげる」を使ったプレゼントの移動を表す文だね。
一見正しそうだけど、ちょっとしっくりこないかも。

そもそも、「誰かが、わたしに、何かをあげる」ってあまり言わないような…。

そうです。
まさに、そこが「あげる」のポイントになってきます。
「あげる」の基本的な意味:ウチ → ソト

「あげる」は、わたし(またはわたしに近い人)がわたしから遠い人に何かを与えるときに使います。
【わたし(またはわたしに近い人)】が【わたしから遠い人】に何かを与える

つまり、物や行為が「ウチ → ソト」へ移動するイメージです。
例:わたしが加藤さんにプレゼントをあげました。


なるほど!
つまり、「あげる」を使うなら、「ウチ(わたし) → ソト」 で表さなきゃいけないんですね。

そう。
でも、最初の例文では 「ソト(加藤さん) → ウチ(わたし)」 になっているから不自然に感じてしまったのです。
授受表現を「ウチ・ソト」の視点から考える

「ウチ・ソト」は敬語の記事で出てきた人間関係を表す考え方の一つでしたね!

はい。
授受表現でも当てはめて考えると整理しやすくなりますよ。
【「ウチ・ソト」に関する記事はこちらをご覧ください↓↓↓】


便利ですね!
「あげる」の例外パターン|ウチ → ウチ、ソト → ソト

質問です。
「わたしが母にプレゼントをあげました」の場合はどうでしょう。
わたしもウチの人、母もウチの人ですよね。

わたしも母もウチの人ですが、これは自然です。

じゃあ、「加藤さんがエマさんにプレゼントをあげました」は?
どちらもソトの人同士のやりとりだよ。

「ソト同士」のやりとりでも「あげる」を使えます。
「あげる」が使えるのはどんな場合?
「あげる」が使える時:
●「あげる」が自然に使えるのは、次のようなパターンです。
①ウチ → ソト
わたしが加藤さんにプレゼントをあげました。
②ウチ → ウチ(わたし以外の身内)
わたしが母にプレゼントをあげました。
③ソト → ソト
加藤さんがエマさんにプレゼントをあげました。
④×ソト → ウチ
⇒「あげる」は使えません。
×加藤さんがわたしにプレゼントをあげました。
まとめ:「あげる」の使い方
・「あげる」は ウチ → ソト の移動を表す授受表現。
・「ウチ → ウチ(わたし以外の身内)」でも自然に使える。
・「ソト → ソト」の場合も「あげる」を使える。
・ただし「ソト → ウチ」の場合は不自然になる → 「くれる」を使う。
●「あげる」は「わたし(ウチ)」を基準にして、外に向かって与える動きを表す表現。
「くれる」を徹底整理!
不自然に感じる文の例
(?) わたしが加藤さんにプレゼントをくれました。

これは、「くれる」を使ったプレゼントの移動を表す文だね。
でも、何だかとても不自然だな。

そもそも、「わたしが、誰かに、何かをくれる」ってあまり言わないような…。

そうです。
この「不自然さ」こそが「くれる」の特徴につながります。
「くれる」の基本的な意味:ソト → ウチ

「くれる」は、わたしから遠い人がわたし(またはわたしに近い人)に何かを与えるときに使います。
【わたしから遠い人】が【わたし(またはわたしに近い人)】に何かを与える

つまり、物や行為が「ソト → ウチ」へ移動するイメージです。
例:加藤さんがわたしにプレゼントをくれました。


なるほど!
だから、先ほどの例文は「ウチ(わたし) → ソト(加藤さん)」になっていて、不自然に感じたのですね。
授受表現を「ウチ・ソト」の視点から考える

「あげる」と同じように、「くれる」もウチ・ソトの関係で整理できます。
【「ウチ・ソト」に関する記事はこちらをご覧ください↓↓↓】

「くれる」の例外パターン|ウチ → ウチ、ソト → ソト?

質問です。
「妹がわたしにプレゼントをくれました。」の場合はどうでしょう。
妹もウチの人、わたしもウチの人ですよね。

妹は「ウチの人」ですが、この文は自然です。
基準が「わたし」に置かれているため、ウチの人 → わたし の場合でも「くれる」が使えるのです。

じゃあ、「加藤さんがエマさんにプレゼントをくれました。
」は?
これはソトの人同士のやりとりだけど…

これは不自然。「ソト → ソト」の場合は「くれる」を使えません。
「あげました」を使います。
「くれる」が使えるのはどんな場合?
「くれる」が使える時:
●「くれる」が自然に使えるのは、次のようなパターンです。
① ソト → ウチ (わたし)
例:加藤さんがわたしにプレゼントをくれました。
② ソト → ウチ(わたしの身近な人)
例:加藤さんが弟にプレゼントをくれました。
③ ウチ → ウチ(ただし自分以外の身内 → わたし)
例:妹がわたしにプレゼントをくれました。
④×ソト → ソト、×ウチ→ソト
⇒「くれる」は使えません。
×加藤さんがエマさんにプレゼントをくれました。
×わたしが加藤さんにプレゼントをくれました。
まとめ:「くれる」の使い方
・「くれる」は ソト → ウチ の移動を表す授受表現。
・「ウチ → ウチ(身内 → わたし)」でも自然に使える。
・「ソト → ソト」の場合は使えない → 「あげる」を使う。
・「~に」が「わたし」の場合、省略されることが多い。
「もらう」を徹底整理!
不自然に感じる文の例
(?) 加藤さんがわたしにプレゼントをもらいました。

これは、「もらう」を使ったプレゼントの移動を表す文だね。
でも、何か変だなあ。

そうです。
まさに、そこが「もらう」のポイントになってきます。
「もらう」の基本的な意味:ウチ ← ソト

「もらう」は、わたし(またはわたしに近い人)が、わたしから遠い人から何かを受け取るときに使います。
【わたし(またはわたしに近い人)】が【わたしから遠い人】から何かを受け取る

つまり、物や行為が「ウチ ← ソト」へ移動するイメージです。
例:わたしが加藤さんにプレゼントをもらいました。


なるほど!
「もらう」は、受け取り手(わたし)を主語にして表す言い方なんですね。

だから、最初の例文が不自然に感じてしまったのです。
授受表現を「視点」と「主語」で比べる

ここが一番大事なポイントです。
・あげる:与える人が主語になる(視点=与える側)
・くれる:与える人が主語になる(視点=与える側。ただし対象はウチ)
・もらう:受け取る人が主語になる(視点=受け取る側)
●「もらう」だけが 受け取り手(ウチ)が主語 になる表現。
「くれる」と「もらう」の関係

あれ?よく見ると、「くれる」と「もらう」って同じ出来事を表しているよね?

その通り。
「くれる」と「もらう」は同じ出来事を視点・主語を変えて表現しています。
●「くれる」と「もらう」は、同じ出来事を逆の視点から表すペアです。
例:
加藤さんがわたしにプレゼントをくれました。
わたしが加藤さんにプレゼントをもらいました。
●どちらも「ソト → ウチ」の出来事。
●主語を「ソト(与え手)」にするか「ウチ(受け手)」にするかで変わる。
まとめ:「もらう」が使える時
「もらう」が使える時:
●「もらう」が自然に使えるのは次のようなパターンです。
① ウチ(わたし) ← ソト
例:わたしが加藤さんにプレゼントをもらいました。
② ウチ(わたし以外の身内) ← ソト
例:弟が加藤さんにプレゼントをもらいました。
③ ウチ(わたし) ← ウチ(ただし「わたし」から見て身内同士のやりとり)
例:わたしが母にプレゼントをもらいました。
④× ソト ← ソト、×ソト ← ウチ
⇒「もらう」は使えません。
× 加藤さんがエマさんにプレゼントをもらいました。
×加藤さんがわたしにプレゼントをもらいました。
まとめ:「もらう」の使い方
・「もらう」は ソト → ウチ の移動を表す授受表現。
・主語は 受け取る側(わたし・ウチ)。
・「ウチ ← ソト」「ウチ ← ウチ」では使える。
・「ソト ← ソト」では使えない。
●「もらう」は 受け取る人の視点で語る表現 です。
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