概要
発話例 | 敬語の種類 | 主語 | 意味 |
---|---|---|---|
持ちますか? | 普通形 | 不明確 | どちらが持つか、文脈・抑揚に依存 |
お持ちになりますか? | 尊敬語 | 相手 | 「あなたが荷物を持ちますか?」 |
お持ちしますか? | 謙譲語 | 話し手 | 「私が荷物を持ちましょうか?」 |
敬語ってなんのためにあるの?

敬語……。
それは、ちょっと大人の雰囲気出してくる中々厄介なヤツです。
✓ 尊敬語 / 謙譲語

丁寧な言い方になるっていうだけで、どうしてこんな難しい用語ばかり覚えなきゃいけないの?

そもそも、覚えたところで、コレ、実際使いこなす自信ないよ。
絶望なんですけど。
丁寧になるだけじゃない?実はすごく便利な仕組み

どうして覚えなくてはいけないのか。
それはズバリ、便利だからです!

そんなの嘘だよ。
使わない方が、自分も相手もきっと楽だよ。

確かに、敬語を覚えるのは難しいです。
でも、普通の言葉づかいでは見えないアレが見えるから、実は覚えた方が会話がスムーズにいく場合が多いと思います。

何それ、おまじない?
敬語を使うと見えてくるもの

敬語表現を覚えることに必死で、さらりと通りすぎてしまうのが「主語」について。
何も新しいことではありません。きっとはじめに説明があるはずです。

尊敬語は主語を高めるとか、そんな話でしょ?

そうなんです。
でも、実際の会話の中では、主語って省きがちですよね。
これは日本語の大きな特徴の一つでもあります。

英語みたいに「私は」「あなたは」って必須じゃないもんね。

でも、改めてここに注目すると、これが結構気の利いた役割を持っているんですよ。
実例でわかる!敬語によって主語が見える場面

ちょっとこの場面を想像してみてください。

私の通うとあるリハビリ施設での様子です。
✓リハビリ施設では、一人のスタッフが患者に付いて様々な準備に付き添ってくれます。
✓自分の手荷物は、カゴに入れて始終持ち歩くことになっています。
✓そのカゴは、患者自身が持つ場合もあるし、付き添いのスタッフが持つ場合もあります。
✓どちらが荷物を持つのかは、その時の体の状態によって様々で、大抵スタッフの人がはじめに声をかけてくれます。

この時のスタッフの声かけについて、少し考えてみましょう。
①「持ちますか」では主語がわからない

これは敬語(尊敬語・謙譲語)ではない普通の言葉遣いです。
この時、聞き手である患者は、荷物をどちらが持つのかパッとわかるでしょうか。

え? あ、はい…。
話し手であるスタッフは、当然自分か相手のどちらかを主語にして話しています。
この場合、「あなたが持ちますか」と聞き手にたずねていると考えるのが自然でしょうか。
でも「私が持った方がいいですか」と、話し手が「確認」の意味で言っていてもおかしくはないですよね。

私は自分が荷物を持つつもりで聞きました!
恩着せがましく伝わるのは嫌なので、ふんわりと言ったんです。
でもこれ、実際に口に出して主語が隠れてしまうと、スタッフが持つのか、患者が持つのか、正確には聞き手に伝わりませんよね。

もちろん、ジェスチャーであったり発音の抑揚であったりと、言葉以外の情報で判断は可能でしょう。
ただ、こういった場面では意外とスムーズにいかない時が多いのです。

会話って、思っている以上に複雑で正確じゃないんだなあ。
②尊敬語「お持ちになりますか」は相手が主語

お持ちになりますか?
これは「あなたが荷物を持ちますか」とスタッフはたずねているのです。

はい、自分で持ちます。
そう、尊敬語は主語を高める表現でしたね。主語を高めるということは…

隠れていても主語は必ず聞き手なんだね!
③謙譲語「お持ちしますか」は自分が主語

お持ちしますか?
【③「お持ちしますか」】
こちらも主語に悩みません。
「私が荷物を持ちますか」とスタッフはたずねているのです。

ありがとうございます。
お願いします。
「お~する」の形は謙譲語。
謙譲語が高めるのは主語じゃない人。
「~を」「~に」「~から」などにいる人を高めます。

高める必要のない主語ということは、主語は話し手なのね。
敬語は会話をスムーズにする道具

今回はさらりと敬語(尊敬語・謙譲語)話をしましたが、実際には覚えなければいけない事はもっとたくさんあります。
丁寧+主語の明示で誤解を減らす

でも、会話の中で主語を明確に示せるというのはとても便利だね。

敬語は「丁寧な言い方になり、人間関係を円滑にする」と言いますが、
誰がその動作を行うのかという部分がはっきりするだけで、コミュニケーションはスムーズになります。

その上、丁寧な言い方になるなんてラッキーだね。
学習のコツは「尊敬語=相手」「謙譲語=自分」
確かに、覚えることはたくさんありますが、
まずは自分と相手がいる会話の中で、
謙譲語が出てきたら、主語は自分(一人称)

ということは、あべこべに覚えてはまずいですね!
しっかりみっちり覚えなくちゃ。

げっ。やっぱりそう来たか!
【参考文献はこちら】
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