敬語の上下関係をコアで整理|親疎・ウチソトまでつながる考え方【日本語教育】

敬語の上下関係をコアで整理|親疎・ウチソトまでつながる考え方【日本語教育】 レシピ②文型
  1. この記事はこんな先生におすすめ
  2. 1分で読めるまとめ版
  3. ここがコア|「上下関係」
    1. 🗝 鍵カード
    2. 🖌 イラストでイメージを掴む
  4. 敬語に影響する三つの人間関係
  5. 上下関係と敬語
  6. 現代の敬語における上下関係
  7. 上下関係をつくる3つの要素:年齢・経験・立場
    1. ①年齢の差(年上・年下)
    2. 年下の子供に敬語を使う?
    3. ②経験年数の差(先輩・後輩)
    4. ③社会的立場(上司・部下)
  8. 上下・ウチ・ソト・親疎の違いを整理してみよう
    1. 上下関係は「ウチ」の中で生まれる
    2. ウチ・ソトは「内」と「外」の関係
    3. 親疎関係は「距離」の関係
    4. 3つの関係を図で整理すると…
    5. 敬語の三関係を表した図
  9. 「上司」は上下関係だけで決まる?
    1. 場面が変わると、敬語も変わる
    2. まとめ
  10. 同僚に敬語を使うのは、上下関係?
    1. ポイントは「親疎」と「ウチ・ソト」
  11. 接客で使われる「マニュアル敬語」
    1. 客と店員は「上下関係」?
    2. 接客では「場面的な上下」が加わる
    3. 接客の関係を整理すると…
  12. マニュアル敬語とは?
    1. マニュアル敬語の特徴とクセ
    2. ここで確認
  13. 間違っている?でも浸透しているマニュアル敬語
  14. 日本語のぼかし表現・ほのめかし
  15. 1分で読める整理表
    1. 敬語の三関係
    2. マニュアル敬語
  16. 一発理解|上下関係の図解まとめ
    1. 🗝 鍵カード
    2. 🖌 イラスト図解
  17. 関連記事
    1. 授受表現
    2. 敬語(親疎関係)
    3. 敬語(ウチソト関係)
    4. 「敬語」とは

この記事はこんな先生におすすめ

「敬語=目上に使うもの」とだけ説明していませんか?

FOR TEACHERS

□ 敬語を「上下関係」だけで説明している。
□「親疎関係」「ウチ・ソト関係」との違いを整理したい。
□ 場面によって敬語が変わる理由を説明したい。
□ マニュアル敬語をどう扱えばよいか迷っている。

1分で読めるまとめ版

■ 上下関係とは?
同じ「ウチ」の中での縦の関係である。
その上下は、主に次の3つ。
①年齢
②経験年数
③社会的立場

■ 上下関係だけでは決まらない
・同僚への敬語は、上下関係よりも親疎関係・ウチソト関係の影響が大きい。
・接客では、「ウチソト関係」+「場面的な上下関係」によってマニュアル敬語が使われる。

■ ポイント
・敬語の目的は、相手を尊重し、円滑なコミュニケーションを行うこと。
・上下関係だけで考えず、親疎関係・ウチソト関係も合わせて考えることが大切。

それでは、この記事のコアから確認しましょう。

ここがコア|「上下関係」

🗝 鍵カード

鍵:「上下関係」の鍵

🖌 イラストでイメージを掴む

上下ウチの中の関係

敬語に影響する三つの人間関係

敬語は「丁寧な言葉」を覚えるだけでは整理できません。

アンレシピでは、敬語を次の3つの人間関係から整理しています。

敬語を使い分ける3つの軸

① 上下関係 ← 今回
② 親疎関係 
③ ウチ・ソト関係

 

今回は、この「上下関係」をコアから整理していきます。

敬語についてはこちらの記事もご参照ください。

親疎関係について

▶ ウチソト関係について

敬語とは

上下関係と敬語

ここからは、「上下関係」について整理します。

「上下関係」と聞くと、人に上も下もあるように感じるかもしれません。

しかし、敬語でいう上下関係は、
人の価値を上下で決めるものではありません
日本語の敬語では、
相手との立場の違いを意識しながら、相手に配慮した表現を選びます

その一つの基準となるのが、上下関係です。

現代の敬語における上下関係

現代の敬語における上下関係は、

絶対的な主従関係ではありません。

 

敬語でいう上下関係とは、
同じ「ウチ」の中での縦の関係です。
例えば、
・上司と部下
・先輩と後輩
などです。

ここでいう「上下」は、相手の人格や価値を表すものではなく、
集団の中での立場や役割の違いを表しています。

上下関係をつくる3つの要素:年齢・経験・立場

では、敬語で意識される「上下関係」には、どのようなものがあるのでしょうか。

大きく分けると、次の3つがあります。

① 年齢の差(年上・年下)
② 経験年数の差(先輩・後輩)
③ 社会的立場の差(上司・部下)

①年齢の差(年上・年下)

まずは、年齢による上下関係です。

家族・友人関係・地域社会など、日常生活の中で自然につくられる関係です。

一般的には、
自分より年上の相手には敬語を使います
しかし、
「年上だから必ず敬語」
「年下だから必ず普通体」
という単純なものではありません。

例えば、年下の相手にあえて敬語を使う場合があります。

年下の子供に敬語を使う?

例えば、子供に対して、

「お母さんはいますか」

ではなく、

「お母さんはいらっしゃいますか」

のように、あえて丁寧に話す場面があります。

年下に敬語

これは、相手を「一人の大人として扱う」という意識が働いているためです。

もちろん、

実際の敬語使用には親疎関係やウチ・ソト関係も関わります。
しかし、この場合は、
年齢による上下関係をあえて調整し、相手を上位に扱っている

と考えることができます。

②経験年数の差(先輩・後輩)

次に、経験年数による上下関係です。

これは、学校・部活動・職場などでの在籍期間や経験の長さによって生まれる関係です。

経験年数の差(先輩・後輩)

例えば、職場では、
・入社したばかりの人
・長く勤務している人
の間に、経験年数による先輩・後輩関係が生まれます。

ここで大切なのは、
年齢と経験年数は一致するとは限らない
ということです。

例えば、
・年上の後輩
・年下の先輩
という関係もあります。

③社会的立場(上司・部下)

最後は、社会的立場による上下関係です。

これは、職務上の役割や権限によって生まれる関係です。

社会的立場(上司・部下)

例えば、
・上司と部下
・教師と学生
・店長とスタッフ
などがあります。

年齢や経験とは関係なく、組織上の立場によって決まる点が特徴です。

例えば、新しく着任した上司が、自分より年下という場合もあります。

それでも、職務上は「上司」として敬語を使います。

上下・ウチ・ソト・親疎の違いを整理してみよう

ここまで読んで、

「上下関係」と「親疎関係」「ウチ・ソト関係」が少し混ざってきたかもしれません。

ここで一度、3つの関係を整理しておきましょう。

上下関係は「ウチ」の中で生まれる

まず、今回学んでいる上下関係は、

同じ「ウチ」の中での縦の関係です。

 

上下ウチの中の関係

例えば会社なら、
・上司と部下
・先輩と後輩
のように、同じ組織の中で立場の違いがあります。

上下関係とは、「ウチ」の中での縦の関係である

ウチ・ソトは「内」と「外」の関係

一方、ウチ・ソト関係は、

「同じ集団か、外部の人か」

という違いを表します。

例えば、
・自分の会社の人 → ウチ
・取引先の人 → ソト
というように分類されます。

ウチ・ソト関係は、「内」と「外」を区別する考え方である

親疎関係は「距離」の関係

そして親疎関係は、

相手との心理的な距離や親しさを表します。

例えば、
・親しい
・あまり親しくない

親疎関係は、人との心理的な距離を表す考え方である

3つの関係を図で整理すると…

ここまでをまとめると、3つの視点で考えることができます。

・上下関係 … 縦の関係
・ウチ・ソト関係 … 内と外の関係
・親疎関係 … 親しさの濃淡 

敬語の三関係を表した図

敬語の三関係

・縦軸:目上 ⇔ 目下
・横軸:ウチ ⇔ ソト
・濃淡:親しい ⇔ 疎遠

「上司」は上下関係だけで決まる?

では、実際の敬語は「上下関係」だけで決まるのでしょうか。

例えば、上司でも、

・話しやすい上司
・少し距離のある上司

では、言葉遣いが少し変わることがあります。

つまり、
敬語は上下関係だけで決まるものではありません。
親疎関係やウチ・ソト関係も、同時に影響しています。

同じ職場の上司の場合

・ウチ
・上下関係(強)
・親疎関係(やや疎遠)

このように、

敬語は一つの関係だけではなく、複数の関係が重なって決まります

場面が変わると、敬語も変わる

さらに、

同じ相手でも、場面によって話し方は変わります。

例えば、
・仕事中は、上下関係を意識した丁寧な話し方になる。
・飲み会では、親しさが前面に出て、少しくだけた話し方になる。

このように、場面によって働く関係は変わります。

まとめ

上下関係 … 同じ「ウチ」の中での縦の関係
・敬語は、上下関係だけでなく、親疎関係・ウチソト関係も合わせて考える。
・どの関係が優先されるかは、場面によって変わる。

同僚に敬語を使うのは、上下関係?

ここまで読むと、こんな疑問が出てきます。

同僚同士には上下関係がないのに、どうして敬語を使うことがあるんだろう? 

確かに、同僚は同じ会社の仲間です。

つまり、「ウチ」の関係ですね。

しかも、役職などの違いがなければ、基本的には横並びの関係です。

では、なぜ敬語を使うのでしょうか

ポイントは「親疎」と「ウチ・ソト」

同僚への敬語には、上下関係以外の要素が大きく影響する。

① 親疎関係

まだあまり親しくない同僚には、距離感を保つために敬語を使うことがある。

② ウチ・ソト関係

同じ会社でも、
・他部署の人
・直属のチームではない人
などには、少し距離を置いた敬語になることがある。

つまり、

同僚への敬語は、上下関係ではなく、

親疎関係やウチ・ソト関係によって決まる場面が多いということです。

接客で使われる「マニュアル敬語」

客と店員は「上下関係」?

こんな疑問も出てきます。

お客様と店員は、上下関係なの? 

一見すると、お客様の方が「上」のように感じますよね。

しかし、これまで学んだように、

上下関係は同じ「ウチ」の中での縦の関係でした。

お客様と店員は、同じ組織の仲間ではありません。

つまり、

この関係は、まず「ウチ・ソト関係」で考えます

接客では「場面的な上下」が加わる

「ウチ・ソト関係」に加えて、その場面だけの上下関係が生まれる。

お客様を立て、店員がへりくだる。

これは会社の上司・部下のような制度的な上下ではなく、

接客という場面だけで成立する役割上の上下関係です。

接客の関係を整理すると…

客と店員の関係

① まず「ウチ・ソト関係」がある
(お客様はソト、店員はウチ)
② そこに、接客という場面だけの上下関係が加わる
→「ウチ・ソト」+「場面的な上下関係」
→ 接客独特のマニュアル敬語が使われる。

マニュアル敬語とは?

接客の場面で使われる、定型的な敬語を

一般にマニュアル敬語と呼びます。

職場で上司に話す時よりも、

よりかしこまった表現が使われることが多いのが特徴です。

マニュアル敬語の特徴とクセ

接客敬語には、次のような特徴があります。

① 謙譲表現が多い

店員は自分を低くし、お客様を立てるのが徹底される。
例)
・〜いたします
・〜でございます
※職場内の上司に対してはここまで使わない場合も多い

② 尊敬表現を積極的に使う

お客様を立てるため、尊敬表現が多く用いられる。
例)
・お待ちいただく
・お召し上がりになる
※実際の上下関係がなくても、役割上の「上」として尊敬表現を使う

③ 定型表現・二重敬語・特殊な言い回しが多い

接客では、場面ごとに決まった表現が使われる。
例)
・いらっしゃいませ
・少々お待ちくださいませ
また、
・おっしゃられる
・〜になります
・ご注文のほう
※文法的には議論のある表現も広く使われている

④ 場面限定の敬語

マニュアル敬語は、接客という場面で使われる敬語。
そのため、場面を離れると同じようには使われない。
※「客を上位に置く」という役割に基づいた敬語である

特徴具体例通常の敬語との違い
①過剰な謙譲語「~いたします」
「~でございます」
職場の上司に対してはここまで頻繁に使わないことも多い
②慣用化した尊敬語「お待ちいただく」
「お召し上がりになる」
実際の上下関係がなくても、“お客様=上位”として自動的に使う
③二重敬語・特殊表現「おっしゃられる」
「ご注文のほう」
「~になります」
文法的には正しくないとされるが、接客場面では定型化している
④決まり文句の多用「いらっしゃいませ」
「少々お待ちくださいませ」
通常の敬語にはない、マニュアル化された定型フレーズ
⑤場面依存性店内では「お客様」
勤務外では「さん」付けで呼ぶ
役割限定の敬語なので、接客場面以外では使わない

ここで確認

接客では、まず客と店員はウチ・ソト関係にあります。

つまり、
・店員(ウチ)
・お客様(ソト)
という関係です。
そのうえで、接客という場面では、
お客様を上位に置く「役割上の上下関係」が加わります。
ここでいう上下関係は、
会社の上司・部下のような制度的な上下ではありません

制度的な上下場面的な上下
上司・部下店員・お客様
継続的接客中だけ
組織で決まる場面で決まる

接客では「ウチ・ソト」+「場面的な上下関係」の両方が働いているため、
マニュアル敬語という、接客特有の敬語表現が生まれる

間違っている?でも浸透しているマニュアル敬語

「マニュアル敬語」は、正しくない敬語なの?

確かに、「〜になります」などは、

文法的には適切ではないとされることがあります。

でも、

お店では普通に耳にしますよね。

違和感はあまりありません。

その背景には「日本語らしさ」があるのです。

日本語には断定を避け、やわらかく伝える文化がある。

日本語のぼかし表現・ほのめかし

例えば、

友人から「明日遊べる?」

と聞かれたとき、

「無理。」ではなく、

明日はちょっと……。

と答える人は多いでしょう。

このように、
言い切らずに伝える表現を、ぼかし表現といいます。
マニュアル敬語も、
このような相手への配慮から生まれた表現だと考えられます。

 

マニュアル敬語には、文法的に議論のある表現もあります。

しかし、

敬語の本来の目的である「相手への配慮」

には合っています。

その安心感使いやすさ

マニュアル敬語の浸透を支えているのではないでしょうか。

1分で読める整理表

敬語の三関係

敬語に影響する関係特徴具体例
上下関係(縦)同じ「ウチ」の中で立場の差を意識する年上・年下
先輩・後輩
上司・部下
ウチソト関係(横)仲間か外部かの区別家族と他人
社内と社外
店員と客
親疎関係(濃淡)親しさの度合い親しい友人、同僚、初対面の人との距離感

マニュアル敬語

制度的な上下場面的な上下
上司・部下店員・お客様
継続的接客中だけ
組織で決まる場面で決まる
特徴具体例通常の敬語との違い
①過剰な謙譲語「~いたします」
「~でございます」
職場の上司に対してはここまで頻繁に使わないことも多い
②慣用化した尊敬語「お待ちいただく」
「お召し上がりになる」
実際の上下関係がなくても、“お客様=上位”として自動的に使う
③二重敬語・特殊表現「おっしゃられる」
「ご注文のほう」
「~になります」
文法的には正しくないとされるが、接客場面では定型化している
④決まり文句の多用「いらっしゃいませ」
「少々お待ちくださいませ」
通常の敬語にはない、マニュアル化された定型フレーズ
⑤場面依存性店内では「お客様」
勤務外では「さん」付けで呼ぶ
役割限定の敬語なので、接客場面以外では使わない

一発理解|上下関係の図解まとめ

🗝 鍵カード

鍵:「上下関係」の鍵

🖌 イラスト図解

上下関係昔のイメージ

年下に敬語

経験年数の差(先輩・後輩)

社会的立場(上司・部下)

上下ウチの中の関係

敬語の三関係

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